2022年8月24日
【調理師を目指す方へ】日本料理の魅力&仕事の素晴らしさ ~調理師科 part2~
引き続き、調理師科 日本料理の髙橋先生からのメッセージです
(part2)
■調理師 仕事の魅力
調理師という仕事には終わりがありません。飽きることがないのです。
食材一つとっても、産地や時期や生産者の違いで味が変わります。
日本海と太平洋では、北と南では獲れる魚の種類も扱いも違います。
日本料理は季節を器の中に表現します。
一年に少しの期間しかできない仕事もあるのです。
知らないことが沢山ある。
あちらこちらに面白いことが溢れている。
ワクワクすることばかりです。
それらを先人の教えに学び、自分で解釈できるようになると、新しい創作意欲に突き動かされます。
まだまだ、これから、と思ってワクワクしている先輩達がずーっと先を走っています。
そんな方たちに追いつきたいと思いながら追い付けず、
憧れを抱き、ずっと成長を続けていける。
お客様に美味しい!の一言を頂くことも嬉しいのですが、
常に宝探しの冒険をしているような感覚で仕事ができる。
とても魅力的だと思っています。
■日本料理の魅力
高校生の頃、漠然と抱いていた不安がありました。
「自分がどこの国の人間かわからなくなる日が来るのかもしれない」
生活様式が変わり、英語を話し、新興住宅地で暮らす。
当たり前にあった風景や風習を知っている人がいなくなる日が来たら、自分は次の世代に何を伝え繋いでいくのだろう。
たまらなく、怖いと思っていました。
私は過去に出会った日本料理の先生が作るお料理が本当に美しくて、
美味しかったことに感動し、その先生の元でアルバイトを始めました。
アルバイト先の調理場に流れる張り詰めた緊張感や、先輩方の一つ一つの仕事の所作が綺麗だったこと。
ワイシャツにネクタイを締め、真っ白い白衣をきて、短い帽子に前掛けをした姿が格好良く見えました。
何より、日本という国の美意識に触れられる場所にいるということが嬉しかった。
日本料理を学ぶためには、その理由を知る必要がありました。
なぜ箸を使うのか、なぜ包丁が片刃なのか、なぜお膳にのせるご飯茶碗が左側なのか、
味噌が地方によって作り方が違うのはなぜか、
北海道でとれる昆布がなぜ京料理に欠かせなくなったのか、
鯛の尾頭付きがハレの日のお膳にのるのはなぜか…
日本料理を学ぶということは、日本の文化や風習を吸収するということでした。
自分はこの国の豊かさを感じることが出来る人間でよかった。
言葉に宿した想いを知ることが出来てよかった。
日本人としてのアイデンティティを実感しました。
日本料理にはたくさんの職人の手がかかります。
たくさんの専門家が結集して作り上げる最後の舞台に立つことが出来る。
それがお客様の前に提供される。
調理場の緊張感は、すべての人への敬意だと教えられました。
こんなに優しく愛に満ちた料理が美味しくないわけがない。
自分は空気としてその場に存在し、その場の一つとして手を添える。
親方という料理長の元で、自分のやるべきことをやる。
その自覚と責任。
チームとしての団結力。
そんなことが楽しいと思えたのだと思います。
■仕事の素晴らしさ
東日本大震災が起きた当時、私は温泉旅館で仕事をしていました。
震災から1か月ほど過ぎたころ、
復興支援として仮設住宅の建設の為に大工さんが200名近く泊まり込みで作業に当たっていました。
朝6時には朝食を食べて出発し、夜8時頃に帰館し、夕食をとる。そんな生活が続いていました。
私たちは4割程度に減った従業員で何とかおもてなしをするため走り回っていました。
料理を作ったり、皿を洗ったり、お風呂を掃除をしたり、館内の掃除をしたり…
あまりの忙しさに当時の記憶はほとんどありません。
そんな中、ある日大工さんの一人に
「うまい朝飯沢山食ったから今日も頑張れる。ありがとうね!!」と大きな声で言って頂きました。
正直、震災直後は無力感しか感じられず何もできない自分をもどかしく思っていました。
ガスがなければ、水がなければ、食材がなければ、
料理をつくる場所がなければ何の役にも立てない。と思っていました。
しかし、料理は頑張る原動力になるのだ。
間接的にでも役に立つことが出来ていたのかもしれない。
料理は人を元気にする。
そして、作る人間は「美味しかった!」の一言で幸せな気持ちになれる。
自分の選んだ仕事を改めて嬉しく思いました。
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